上郡町のモロヘイヤ畑『モロ平野』では、収穫のためのモロヘイヤ栽培と同時に、栽培方法の違いによる栄養価や生育具合の差を調査するための試験栽培をおこなっています。
栄養価の高いモロヘイヤがたくさん収穫できれば、モロヘイヤを原料とする製品『あおつぶ』のさらなる品質向上が見込め、お客様の健康により寄与できると考えているからです。
2019年には甲南大学理工学部・茶山教授の研究室と株式会社青粒との共同研究により、モロヘイヤの高い抗酸化能を確認することに成功しました。
引き続き、2021年度は、
● モロヘイヤの栽培方法の違いによる抗酸化能の違い
● モロヘイヤの栽培方法の違いによるミネラル含有量の違い
について共同研究をおこないました。
株式会社青粒は、『モロ平野』で、さまざまな栽培方法で栽培したモロヘイヤを測定試料として提供しています。今回、青粒が提供したモロヘイヤの栽培方法は、以下の9種類です。
栽培方法の種類
*1 定 植:植物を栽培する最終の場所に植えること。主に植物を苗まで育ててから、畑に移し植えること。
*2 直まき:苗まで育てずに、種を直接畑にまくこと。
*3 マルチ:畑の畝をビニールシートやポリエチレンフィルム、ワラなどで覆うこと。土壌の水分を保つ。
他にも、地温の調節や、雑草の抑制、乾燥防止、病気予防の効果がある。
*4 摘芯部:摘芯とは、野菜や草花などの植物の生育の際、人為的に先端を切断することにより、
枝の数を増加させる栽培方法である。摘芯部とは切断した部分。
*5 青粒の種:株式会社青粒がフィリピンでも使用している種(小林種苗)。
*6 こころ農園の種:こころ農園が使用している種(愛三種苗)。
*7 鞍居地区の種:鞍居ふるさと村づくり協議会が「鞍居ふるさと農園」で使用している種(タキイ種苗)。
栽培方法の違いによる抗酸化能の差について、甲南大学理工学部機能分子化学科 環境分析・計測化学研究室 前川泰成さんが卒業論文として発表しました。
評価の方法は、測定試料溶液に光を当て、吸光度を測定することによって、その物質の濃度を定量的に分析する「吸光光度法」。ビタミンEの誘導体であるTrolox®(6-hydroxy-2,5,7,8-tetrametylchroman-2-carboxylic acid)と野菜の測定試料との比較によって抗酸化能を評価する方法がとられました。
以下は、上記9種類の栽培方法とフィリピン産モロヘイヤについて、測定試料から得られた抗酸化能の数値をグラフで表したものです。
各栽培方法の抗酸化能
実験結果から、前川さんは以下のように考察しています。
1. 黒マルチよりもシルバーマルチの方が抗酸化能が高い。
2. 牛糞のみの肥料より「牛糞+炭」の肥料の方が抗酸化能が高い。
3. 苗を定植するより種を直まきする方が抗酸化能が高い。
4. 黒マルチや畝の有無で抗酸化能に差は出ない。
5. 摘芯部と収穫分では、摘芯部の方が抗酸化能が高い。
6. 株式会社青粒の種より、こころ農園や鞍居地区の種の方が抗酸化能が高い。
7. 国産モロヘイヤよりフィリピン産の方が抗酸化能が高い。
地温は上げずに湿度を保つシルバーマルチが有効なことや、苗を使うより直まきの方の抗酸化能が上がる意外な結果が出ました。
こころ農園の種や鞍居地区の種からできた、葉が大きいモロヘイヤや摘芯部の抗酸化能が高いのは、より多く日光に当たるためと推測されます。
また、フィリピン産は年間を通して高い温度で育つことが関係していると思われます。
今回は、水溶性抗酸化物質のみの測定実験だということや、抗酸化物質の種類の特定は行なっていないなど、比較実験としては不足部分もあるとはいえ、このような多様な栽培方法での抗酸化能の比較実験は、全国でも他に例が無い貴重なデータです。
栽培方法の違いによるミネラル含有量の差について、甲南大学理工学部機能分子化学科 環境分析・計測化学研究室 原 將太さんが卒業論文として発表しました。
ミネラル含有量の評価測定には、多元素を同時に測定することが可能で、しかもダイナミックレンジが広いという利点があり、食品分析の分野で利用されている誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法が用いられました。
以下は、上記9種類の栽培方法と市販のほうれん草について、測定試料から得られたミネラルの含有量を表にしたものです。
各栽培方法のミネラル含有量比較
実験結果から、原さんは以下のように考察しています。
1. 全般に、カルシウム、カリウム、ついで、マグネシウム、リン、硫黄の含有量が多い。
2. 「牛糞+炭」の肥料(B-①-3)では、ケイ素が少なく鉄が多い。鉄が多いは炭の影響と考えられる。
3. 間隔を空けた直まきのうち、B-①-4(マルチ、畝有り、牛糞+モロヘイヤ粉末)では、カリウム、鉄、銅以外のミネラル含有量が少なかった。
4. 間隔を空けた直まきのうち、B-②(マルチ、畝有り)では、カルシウム、鉄、ケイ素が多いが、カリウム、硫黄、銅が少なく、リンは値が得られなかった。
5. 間隔を空けた直まきのうち、B-③(マルチ、畝無し)では、カルシウム、カリウム、硫黄、銅、マグネシウム、亜鉛、リン等多くのミネラルで高い値が得られた。
間隔を空けた直まきで栽培したモロヘイヤで、比較的多くの種類・量のミネラルが測定されました。これは、成長しても葉が密集しないので、太陽光が全体によく当たり栄養素が多く吸収されたためと思われます。さらに、同じ直まきでも、マルチや畝がない方が全体のミネラル量が多いのは、意外な結果でした。
今回、試験の試料用として、栽培条件を変えたモロヘイヤを提供しましたが、栽培地の土壌に含まれるミネラルの分析は行っていません。同じ栽培地であっても、場所によってミネラルの分布には差があることがわかっており、測定値にも多少の影響をあたえた可能性があることは否定できません。
しかし、この点を考慮に入れても、栽培方法の違いによりモロヘイヤの抗酸化能やミネラル含有量に大きな差が生じることが確認できました。今回の研究は、より栄養価の高い国産モロヘイヤの栽培を目指す株式会社青粒にとって、とても有意義な研究でした。研究結果で得られた貴重なデータを、今後の栽培に生かしていきたいと考えています。
株式会社青粒